携帯小説。。。

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  ほくろ

いつもより早い時間の満員のバスに乗り込む。学生の隣りになんとか食い込んだ。ギター
を持ちヘットフォンから音が漏れているような男子高校生だ。ヘットフォンから聞こえて
くる音的にバンドをやってるみたいだった。楽譜も見ていた。次の停留所で満員のバスに
更に人が乗って来た。その時その高校生を押してしまった。上手くスペースに入込んだそ
の男子高校生と目が合った。
(あっ!)
その瞬間走馬燈のように8年前の記憶が甦った。胸がドキドキ鳴り始めた。

8年前、まだ私が小学生の時、名前が近く出席番号が近かった彼とはすぐに仲良くなっ
た。たまたま始めた英会話教室も一緒だった。私は彼のことが好きだった。彼も私のこと
が好きだった。まだ出始めたばかりのプリクラ機でプリクラを撮った。バレンタインに
チョコをあげた。学校から一緒に帰ってきた。
幼い頃の淡い記憶が甦る。
そんな楽しい日々はあっけなく終わった。クラス替えで違うクラスになり、まもなく彼は
転校した。まだ携帯なんて持ってなかったから、連絡先もわからずもう会えないだろうと
思っていた。

こんな偶然があるものかと思った。たまたま乗ったバスの隣りになるなんて。8年前の記
憶だから曖昧だが、彼が下を向いた時に見えた鼻の中心にあるほくろで確信を持った。話
しかけるか悩んだ。彼もチラチラ私を見ている気がした。でもこの8年の間にストレート
パーマをかけ小学生から女子高生になった私のことがわかってるかどうかなんてわからな
かった。でも私の中には確信があった。

思い切って声をかけようと思った。胸がドキドキ鳴り続ける。
(目が合った!)
声をかける絶好の機会が訪れたというのに私は声が出なかった。目を伏せてしまったの
だ。そのあともお互いチラチラと見ていたが、何も出来ず駅に着いてしまった。バスから
降りる時、私と彼の間に人が入ってしまった。降りてから振返っても人の波に流され彼を
見つける事が出来なかった。私は後悔した。胸が痛くなり、涙が自然とこぼれてきた。
コートの裾をギュッと握った。
学校に行ってからももちろん忘れられず、彼のことばかり考えていた。
(明日今日と同じバスに乗ろう。もしかしたらまた会えるかもしれない。)
今日の夜は早く寝よう。明日また、彼に会うために早いバスにのらなきゃいけないから。
また胸がドキドキ鳴り始めた。







★実はこれ実話だったりね笑